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「成る程ね。貴方の勘違いがよく分かったわ」
一通り神崎から話を聞いた林は呆れたように溜め息をついた。
「せやかて、あの時ちゃんとこの耳で…」
「本当に分かってないわね…。この際だから言うけど、鬼川君が転校する日、私も用があって朝早く学校に行ったの」
「えっ、じゃあ…」
「えぇ、悠莉ちゃんは言ってたわ。『この手紙を神崎君に渡して』って」
「……んん?…わ、わいに?」
思わぬ展開に目を白黒させ聞き返すと、いいから最後まで聞きなさいと睨まれた。
「それで、つい最近須江君から聞いたんだけど、鬼川君も勘違いしてたらしいわ。…私が貴方の事が好きだって」
そこまで聞いて、何となくあらすじが読めた気がした。
つまり鬼川は、林が自分の事を好きだと思い、なおかつ自分は悠莉ちゃんは鬼川が好きだと勘違いした訳で…。
「…………」
「私が貴方を好きなんてありえないのに。まっ、両成敗って事ね。どっちもどっち」
でも殴った事は後で謝りなさいよと軽く肘で小突かれ、ほんま美沙りんには敵わなへんなぁと照れ隠しに神崎は苦笑した。
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ガラガラッ
ドアが開く音が聞こえ、書類整理をしていた藤田は鬼川と雄介を見て目を丸くさせた。
「揃いもそろって喧嘩かお前ら。特に鬼川、お前は喧嘩は二度としないって言ってただろ」
「理由があっての事だ。こいつの手当てしてくれ」
二人の意味深な会話に、何か昔にあったのかと一瞬思うが深追いは止めようと思いとどまる。
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