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鬼川が雄介を椅子に下ろすと、藤田はあぁ、悪いと手を合わせ、
「これから職員会議なんだよ。適当に救急箱使っててくれ」
そう言うとさっさと退散してしまった。
「…ちっ、仕方ねぇな。おい、足出せ」
「えっ、いや別にこれぐらい…」
「こうなったのは俺の責任だ。いいから足出せ」
いつになく真剣な眼差しで此方を見ている鬼川に戸惑いながらも、おずおずと捻った方の足を出した。
湿布を貼られ包帯を巻かれていく。何だか気恥ずかしくて暫くそわそわしていたが、ふと鬼川の怪我を思い出した。
「……!…おい」
「じっとしろよ。俺だってその、一応迷惑掛けちゃったし…」
お互いに相手の手当てをしていき、どちらも何となく黙り込んでいた。
その沈黙を破ったのは鬼川だった。
「………。悪かったな、巻き込んで」
切羽詰まったその表情はとっさに文句も言えないほどに雄介を狼狽させた。初めて見る相手の雰囲気にまた、先程の違和感が込み上げて来た。
「……?どうした、どっか痛…」
「…調子狂うんだよ」
「あ?」
ぐっと顔を上げた雄介は微かに目尻を赤くさせていて、
「何時も強引でふてぶてしいのがあんただろっ?急にそ、そんな顔されても対応に困るんだよ!」
かなりの早口でそう言ってから更に顔を赤面させて雄介は俯いてしまった。
鬼川の視線が痛い程伝わって来る。
(くっそ…、何言ってんだ俺。でもいきなり態度が変わるから…)
何言われるんだろうとビクビクしていたが、なかなか言葉が帰って来ない。
そっと顔を上げるとそこには…。
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