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俺は東京のごく普通の家庭に生まれ育った。
家族はサラリーマンの父親、主婦の母親、2歳離れた弟。
本当に平凡だ。
名前も平凡。「望月雄太」
身長は高いし顔もハーフのようだが、俺は地味キャラで本当にその辺に転がってそうな奴だった。
18になるまで望月雄太という名前と地味な性格を捨てて生きることになるとは思っていなかった。
18歳で家出をした。
ここでは、俺の夢は叶えられないから。
俺はマンソンみたいなアーティストになりたい。
バンドやって音楽で飯食ってきたい。
でっかい夢だけ持って身一つで飛び出したんだ。
だけど現実は甘くない。
その時の俺は500円玉1枚しか持ってなかった。
500円で何ができる?
住む家も仕事もない。
仕事したくても大した学もなきゃ住むとこもねぇガキを雇ってくれるとこなんかない。
夢を叶えるどころかその日の生活もままならない。
そんな状態で、ふらふらとたどり着いたのは不夜城歌舞伎町だった。
酔っ払いのオヤジ、ホームレス、怪しい客引き、着飾った水商売の女、キャッチ中のホスト。
ネオンの光の中を行き交う歌舞伎町の住人はどこか別世界の生き物のようだ。
なんとなく、ただ見ていたら声をかけられた。
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