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「おにーさん、格好いいじゃん。ホストやんない?」
ホストの勧誘だ。
声をかけてきたのはチャラついた茶髪にスーツのいかにもホストです!と全身で主張してるような奴。
「いや、僕あんまり人と話せないし自信ないんで…。まず住むとこもないし働けないです。」
ホストという仕事に抵抗があった俺は一度断った。それに住所不定の家出少年なんか普通は雇わないし。
「何?住むとこないなら寮あるからそこ住めばいいじゃん!口下手でも慣れれば話せるって!面接だけでもどう?」
「え…?寮があるんですか?」
「そうだよー。だから住むとこには困んねぇしさ。それにホストってみんなが思ってるほどえげつないもんじゃないよ。普通に給料も貰えるしさ。金がないなら前借りもできる。悪くないだろ?」
住む場所と生きていくための手段が保証されるということが当時の俺にはすごくありがたかった。
ホストという仕事への抵抗はなくなってはいないけど俺はホストになった。生活のために。生きていくために。
俺はこれから望月雄太という名前を捨て、十六夜 蘭として生きる。
十六夜 蘭という源氏名は自分でつけた。
月の下で咲き誇る、美しい豪華な花になりたかった。
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