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涙で濡れた顔でも、雫の笑顔は、綺麗だった。
一滴の涙が雫の頬を伝って流れるのを見て、俺はその涙を指で拭いた。
流れる雫の涙にも、愛おしさを感じるみたいに。
「涼真様…私は、もう、我慢しなくて、いいんですか?
いっぱい甘えて、いっぱい一緒にいて、いっぱい好きになって、涼真様を……“愛して”も、いいんですか?」
「……ああ、全部、受け入れてやんよ。
俺の男の器は、海よりもでかいんだぜ」
「……はい」
涙がやみ、笑顔がさらに眩しく、綺麗に見えた。
「…んじゃ、そろそろ中に戻るか。
夏でも夜風は冷えるからな」
「そうですね…」
「…ほら」
「え?」
俺は雫の前に、手を差し出した。
「え?じゃねぇよ。
冷えるから……手ぇ繋ぐかってことだ」
「……ふふ」
「な、なんだよ?」
「いいえ、なんでもありません」
一瞬、雫にからかわれた感があったが、別にいいか。
差し出した俺の手に雫の手が重なったのは、その直後だった。
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