過去を知る男

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プロの殺し屋を三人雇うほど俺と秋穂さんの命とこの黒い箱を狙うなんてどうかしている。 「向井さん、さらに悪いことを言うようだけど“黒い星”は如何なる手段を使ってでも竹塚や向井さんの居場所を割り出そうとしてくる。ここがバレるのも時間の問題かもしれない。俺も出来るだけのことをするつもりだが、守りきれなかったらその時は覚悟してくれ」 覚悟……。これはもう死しかない。だがこの状況に突然放り込まれて幾度と無く命の危険を感じている。 それに自分でもこの状況に慣れてきて精神面でも成長したのかなと思うほどだ。 「向井さん、忠告しときますけど必要ないときは外出も控えた方がいいです。勿論、電話やクレジットカードなんかも使用は控えてください。奴らはそこから居場所を割り出す可能性もあるので」 俺は頷き納得した。確かに不必要に外出なんかしたら見す見す自殺をするようなものだ。 「竹塚、お前もな。今後は外部の連絡は取らないようにしろ。分かったか?」 「分かってるよ。何年この仕事してると思ってんの?」 田島は安心した顔つきをしていた。
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