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色々あったが、田島の家に居ればしばらくは安心できそうだった。
と、田島は俺に話しかけてきた。
「向井さん、竹塚の逸話とか聞きたいですか?」
興味深く切り出され、俺はもちろんと答えた。
「あなたは竹塚がどれだけ強いかもうご存知ですよね?」
格闘、射撃、尋問……。彼女の恐ろしい一面は一通り見てきた。この数日間で。
「え、ええ……。それはもう……」
俺はこう言った。秋穂さんは照れくさそうにしていた。
「田島、止めてよ。昔のことを話すのは」
田島は話を止めるつもりは毛頭無いようだった。
「それがさ、こいつはある任務でとんでもない記録を作り出したんだ」
「とんでもない記録ですか?」
俺は首を傾げた。一体どんな記録なのだろうか?
「その任務っていうのは、テロリストなどの悪党連中に銃を売り捌いていた武器商人たちのアジトを急襲する任務だったんだが、こいつは一人で10人を締め上げたんだ。凄かったのは一度も武器を使わずに素手で抑えたんだ。さすがに俺は驚いたね」
仮にも相手は武器商人だ。強力な銃やら何やらを持っていたに違いない。
それなのに素手で10人も抑えただと……。
生存能力、戦闘能力……。あとどれくらいの能力とスキルを持っているのだろうか。
「女性とは思えないですね……」
正直ちょっと引いた。こんなに強いとは思いもしなかった。
「まあ、驚くのも無理は無いと思いますよ。向井さん、あんまりこいつを怒らせないほうがいいですよ」
俺は激しく首を縦に振った。
「あれは昔の話だから気にしないで」
秋穂さんは念を押すように言った。
「でも組織に入った当初からこいつは凄かったな」
田島はさらに過去の話を切り出した。
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