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夕飯時は意外に会話が少なかった。皆、黙々とロールキャベツを口に運んでいた。
まるで流れ作業のように見えた。
無言の食事が終わり、俺と秋穂さんは後片付けをした。
「あ、あの…、秋穂さん?」
俺は料理の感想を言おうと秋穂さんを呼んだ。
「ん?何?」
秋穂さんは皿を洗いながら、首を傾げていた。
「ロールキャベツのことなんですが……」
秋穂さんはその瞬間、俺の顔を覗き込んだ。
「えっ?ロールキャベツがどうかした?」
「……とっても美味しかったです。お世辞ではなく本当に」
秋穂さんはほっとした表情でニッコリ笑った。
「良かった。喜んでもらって。味だけがすごく心配だったけど安心した」
実際、本当に美味かった。俺は何一つ嘘は言っていない。
笑顔の秋穂さんを見て、俺も自然に笑みがこぼれた。
皿洗いが終わり、俺は疲れてベッドに寝転がった。
明日は古田に会うことになる。危険が無いことをただ祈るだけだった。
俺は今まで“黒い星”がどれだけ巨大で、どれだけ凶悪で、どれだけ危険かよく分かっている。
秋穂さんは口にこそ出さないが、もしかして“黒い星”と対決をしようと考えているのではないだろうか。
あくまで推測だから、はっきりしたことは言えないが潰す気だとしたら相当危険は伴う。
田島の協力があっても無理だろう。
俺は不安を抱えたまま、目を瞑った。
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