貴重な証言

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私は無線を耳に近づけながら、田島が古田らしき人物に近づく光景を覗いた。 田島はゆっくりと近づいたかと思うと突然、古田らしき人物の席の目の前に座りだした。 『こんにちは』 無線から田島の声が聞こえてきた。 『お前!勝手に席に座るな!』 古田らしき人物は許可無く相席されたことに腹が立っているようだった。 『突然、すいません。私はフリーの記者です。あなたは古田さんで宜しいですか?』 『そうだよ。で、俺に何の用だ?』 私は次の田島の言葉を固唾を呑んで聞いた。 『では単刀直入にお聞きします。“黒い星”について何か知っていることはありませんか?』 思い切った質問に私は驚いた。 『無理だね。マスコミには教えられない。帰れ』 『記事にすると誰が言いました?一応フリーの記者ですけどあくまで個人的に訊きたいだけなんですよ』 私は古田の表情を見た。少し驚いた顔つきをしていた。 『本当か?記事にはしないってこと』 『私は約束を守ります。それにあなたが喋ったということも誰にも言いません』 無線だが田島の言葉は力強く感じた。確かにこの言葉に嘘偽りはない。 『あの組織は俺を捨て駒にしか思っていない――。それが嫌で嫌で仕方なかった。いつか裏切ろうと思っていたところだったんだ。だから俺の知っている範囲で話すよ』 捨て駒……。きっと扱いはひどいものだったのだろう。 『ご協力ありがとうございます。では早速質問しますよ』 田島の表情に笑みが浮かんでいた。私も心の中でガッツポーズをした。
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