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この質問には古田は暫く沈黙していた。
『答えにくいですか?じゃあ質問を変え……』
その時、古田は意を決したように口を開いた。
『いや、話そう。黒い箱のことを』
私は心底ほっとした。これが分からなければ全てが無駄になると思ったからだ。
『俺が知っているのはあの黒い箱を開けるためには4桁のパスワードが必要なことと、パスワードを知るためにはある場所へ行かなければならないことだ』
どうしてもったいぶった話し方をするのだろうか。
『ある場所とは何処ですか?』
間髪入れずに田島は質問をした。
『これはあくまで噂なのだが、もちろん“黒い星”の幹部クラスの一部の人間はパスワードを知っているが、もう一つパスワードを知っているのが“公安極秘諜報部”に居るスパイが知っているって噂だ』
『それはどこで聞いたのですか?』
田島は動揺せず、古田に尋ねた。
『だからあくまで噂だ。“黒い星”の内部では広まっている噂だからな』
自分の所属している組織にテロリストの手先がいるのはどうやら本当だった。田島の推理は当たっていた。
『分かりました。手間を取らせてしまってすいません。ご協力感謝します。ここの勘定は私が出します』
田島はそう言って店員を呼び、古田のコーヒー代を支払った。
『この恩は忘れませんよ』
『本当に記事にしないんだよな。信じていいんだな?』
古田は念を押した。
『安心してください。だからメモも何も使ってませんよ』
『分かった。仕事頑張れよ』
古田の貴重な証言はかなり役に立った。進展はかなりあった。
しかし、“公安極秘諜報部”にスパイがいることの裏づけも取れてしまった。
私は今まで正義を信じてこの組織に所属していたのにその組織内でテロリストがいるなんて信じられない気持ちで一杯だった。
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