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「オッケーだ!竹塚、車に戻るぞ!」
田島は早足で戻ってきた。私も言われるまま早足で誠の乗っている車に戻る。
「終わったんですか?」
何も知らない誠は私に訊いて来た。
「終わったよ。しかもかなり貴重な情報も貰えた」
と私は答えた。誠はそれを聞いて安心したようだ。
「さ、早く車を出して」
田島も助手席に乗り込むのを確認し、誠は車を発進させた。
私はシートにもたれながら流れ行く東京の景色をぼーっと眺めていた。
立ち並ぶビル、行き交う人の波、ありえないほどの量の車。全てがここが東京であることを再確認させてくれた。
「何か腹減ったな。竹塚や誠さんも腹減ってないか?」
田島はお腹を擦りながら尋ねてきた。
「あっ、じゃあお願いしていいですか?俺も腹減ったんで」
誠は真っ先に手を挙げて答えた。
「私もじゃあ食べる」
一人だけ食わないでいるのは寂しい。だから私も食べることにした。
「分かった。誠さんこの辺で止めてください」
田島はとあるコンビニの前に車を止めさせた。
「俺が買って来るから少し待ってて」
田島は足早に車を出て、コンビニの中に入っていった。
「……二人きり、……ですね」
突然誠が口を開いた。その言動から察するにとても緊張した様子だった。
「そうだね。どうかしたの?」
私はフランクに接した。
「ここだけの話、最初はあなたを怖く思ってましたけどこうして話していくと秋穂さんって優しくて、乙女で、正義感の強い女性だなって思いました。お世辞ではありませんよ。俺が不思議に思うのはあなたに彼氏がいないことです。こんな素敵な女性を放っとくなんておかしいです!」
おかしいです、という言葉に特に力を込めて誠は言ってきた。
長々と私を褒めてくれた。その言葉の一つ一つ私の心にまるでボディーブローを食らったかのように重く響いてきた。
今まで『お前はよくやった』とか『お前がいないと駄目だ』とかそんな褒め言葉を何度も聞いてきた。
しかし、誠の言った言葉に私は何故か強く響いてきた。
そんな疑問が過ぎった直後、私は顔を赤くし照れていた。
「誠、そんなに褒めても何も無いよ。全くこれだから男は……」
私はこれが高校時代以来のときめきであることに気づいたのだった。
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