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帰りの車中は驚く程静かで、誰も一言も口を開くことは無かった。
やることを終えたので皆少し疲れたのであろう。
しかし、気まずい。気まず過ぎる。
でも何も話題が浮かばなかった。どうしようかと思うが何も出来ない。
結局、会話の無いまま田島の家に戻ってきた。
まだ時間は午後の14時ぐらいだった。
家に入るなり、田島は風呂場へ行き、誠は寝室へ直行していった。
私は特にすることも無かったのでソファーに寝転んだ。
手を頭の後ろに組み、誠と最初に出会った時を思い返した。
あの時、もし私が電車に乗らなかったら誠とは出会えなかったのだ。
あの時本当だったら用意された車で直接“公安極秘諜報部”に戻る予定だった。
しかし、“黒い星”の連中の数が思ったほど多く車に乗れば蜂の巣にされる危険性があったので車は止め、咄嗟に目に見えたのが駅だった。
少しでも判断が遅れていたら、私の命は無かっただろう。この仕事は如何に冷静かつ的確で素早い判断力があるかどうかで生き残る確率が変わる。
今までその判断力で幾多の修羅場を掻い潜ってきた。
駅に入って組織に電話を掛けたがまるで繋がらなかった。何度コールしても無意味だった。
直感的におかしいと思った。いや、この任務自体そもそもおかしかった。
まず、あまりにも危険すぎる任務だった。軍隊並みの力を持った“黒い星”の本部に何故私一人が派遣されたのだろうか。
何か理由でもあるのだろうか。しかし、反論出来ない立場の私はその任務の問題点を指摘しないで単身任務に臨んだ。
無傷で黒い箱を奪えたのは奇跡としかいえなかった。今までのどんな任務より命を落としかける場面が多かった。
自分で言うのもおかしいが非凡な生存能力を持っていたのかと疑う。
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