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「…俺が寝てる間に何があったんだ?」
カッティは辺りを見渡した。そこに自分の知っている景色はなかった。
「なんで…みんな死んじまったのか?」
カッティは村を歩き回った。そして、一番見たくなかったモノを見つけてしまった。
「義母(かあ)さん…。」
そこに倒れていたのは、カッティが六歳の時にこの村に流れ着いて以来、自分を育ててくれた義母だった。カッティは涙を堪えきれなかった。そしてまた、とぼとぼと歩き出した。
「なぁ、これからどうしたらいいんだよ?シュウ、シルフ…。お前らも死んじまったのか?俺はひとりぼっちなのか?」
生命の息吹が消え去った村の真ん中で、カッティは空を見上げて立ち尽くしていた。
「…とりあえず、みんなをこのままにしておくわけにはいけないよな。」
カッティはそう呟き、ある決心をした。
それから、村人一人一人の亡骸を大樹の下に運んだ。村の人間はそう多くないので、みんな家族のような付き合いをしていた。カッティは亡骸をみる度、涙が止めどなく溢れ出していた。
村中を探し回ったが、シュウとシルフだけは見つけだすことが出来なかった。
「あいつ等は生きているんだな…。」
カッティはホッとした。自分の親友は生きている。それだけで気持ちが楽になった。
「よし、始めよう。」
カッティは、村人一人一人の墓石を立て、そこにみんなを埋め、花を供えた。涙はもはや枯れ果てて流れなかった。
どれほどの時間が経ったか分からないが、カッティは全員を埋葬することが出来た。
「これで少しは報われるかな?」
カッティはそう呟いた。すると、どこからか女性の声が聞こえた。
「あなたは、カッティ=クロノアですね?」
「だ、誰だ!」
カッティは大樹を見上げた。するとそこには、真っ白ないでだちで、長い黒髪を靡かせた女の人がいた。
「落ち着いて下さい。私は大樹の精です。この世界の七つの精霊を司る、いわば世界の力の源のような存在です。」
「大樹の精だって?そんな奴が俺に何の用だよ?」
「あなたに、頼みたいことがあるのです。」
「俺に?」
カッティは首を傾げた。
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