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二人は大樹の中を進んでいた。中は薄暗く、空気はじめじめとしていた。中に進めば進むほど、光は射し込まなくなり、二人は手の感触だけでお互いを確かめ合っていた。
「シルフ、離れるなよ。」
「うん。」
二人はそれでも怯むことなく進み続ける。
すると不意に空間全体が明るくなった。
「きゃ!」
シルフはシュウにしがみついた。
「なんなんだ一体?」
シュウは目を細めて前を見てみた。
「な、なんだよこれ…。」
シュウは言葉を失った。何故なら、壁一面に大きな魔物と戦う一人の男の姿を描いた絵画が描かれていたからだ。
「これは、ギガンテスとはちょっと違うね。」
シルフはシュウにしがみついたまま絵画を見ていた。
「ん?端の方に何か書いてあるぞ?」
シュウは右端の方に書いてある文字を見た。
「アークと共に戦い、共に散った者-シェイド=クレイド-」
「シェイド!?」
シルフは驚いた。その絵の中心人物が自分の祖先なのだから。
「一人でこんな魔物と戦ったって言うの?」
シルフは感嘆していた。その時、どこからか若々しい男の声が聞こえてきた。
「いやぁ俺の子孫がこんなに可愛く育ってくれてんなんて嬉しいなぁ。しかも彼氏付きかよ。その上そいつはアークの子孫じゃねえか。いやぁ俺達まだ繋がってたんだな。」
「ベラベラと良く喋るのね。シェイドさん。」
シルフの反応は冷たかった。
「そんな事言うなよ~。てかよく俺がシェイドだって分かったなぁ。」
「今の話聞いたら大体分かるでしょ。」
シルフは呆れていた。こんな人が本当にギガンテスに立ち向かったと言うのだろうか?
「姿を見せないのか?」
シュウは問うた。
「残念ながら俺はもう魂だけの存在だから、実体は無いんだ。だから、俺の可愛い子孫に力を貸そうかな?と思って話しかけた訳よ。それが俺に出来る唯一の事だからな。俺達の力不足で、君達までギガンテスと戦う事になってしまったんだし…。」
シェイドの声は少し暗くなっていた。
「シェイド…さん?」
シルフがそう言った瞬間、体の中に何かが流れる感覚がした。
「何…?」
シルフは自分の掌を眺めた。
「何か変わったか?」
「何も変わらない。だけど、私の中でシェイドさんの意志が伝わってくる気がするわ。」
シルフはそう言って笑った。
そして二人はまた奥へと進んでいく。
「これで君を、あいつから護れるかな…。」
シェイドは最後にそう呟いた。
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