ちぃのママ

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ちぃのママ

河に落ちた後、僕は風邪をひいてしまった。しばらくは辛かったけど、ちぃがずっと傍にいてくれたから、何だかぽかぽかした気持ちだった。 僕の風邪も大分良くなった日曜日の昼下がりのこと。 家の前に車が止まったことに気付いた。 この家にはお客さんなんて滅多に来ない。 チャイムの音にちぃが返事をして出ていく。僕はちぃの傍にピッタリくっつく。 「ちはる…。元気にしていた?」 ちぃに話しかけたのは綺麗な女の人だった。 ちぃは目を大きく開いて黙り込んでいる。 「ちはる?ママのこと忘れちゃった?」 その女の人はそう言ってちぃに触れようとした。 その瞬間ちぃはびくっと肩を震わせ硬直する。 「あなたはママなんかじゃないわ!」 そう言って後ずさる。 ちぃの言葉を聞いて優しそうな笑みを浮かべていた女の人は、表情を変えた。 「相変わらず可愛くない子ね!」 そう言ってちぃの髪の毛を掴み突き飛ばす。 僕はびっくりした。これがちぃのママ…? だってママは優しくて温かい人だと思っていたのに。 倒れたちぃの腕からすり抜け僕は、ちぃを突き飛ばした腕に噛みつく。ちぃを傷つける奴は許せない! 「何よ、この犬!!」 キャイン! 僕は壁に思いきり叩きつけられた。 「礼於!!」 頭がクラクラしたけど、それでも僕は向かっていく。 だってこんな人がちぃのママだなんて…。 こんな人がちぃの逢いたがっていたママなの…? 小さな僕を無視して女の人はちぃを掴みあげた。 「今度私が来るまでにこんな犬捨てておきなさい!」 そう言うと、不愉快そうに僕を睨みつけドアを乱暴に閉めて出ていく。 ちぃは痣になった頬を押さえながら僕を抱き上げる。 「礼於…。大丈夫?」 僕は少し頭が痛かったけど元気に尻尾をふってみせる。 「あんな人…。ママじゃない…。」 ちぃは小さく呟いて、僕の耳を撫でながらドアを見つめ続けた…。
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