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初めて行く学校はすごく広くて、僕はそわそわした。
おじいちゃんに抱かれて僕はちぃの教室に向かう。
教室に入るともう授業が始まっていた。いろんなこどもたちやママやパパが一斉に僕たちを見る。
「おじいちゃん!礼於!」
ちぃがびっくりした顔をして立ち上がる。
それを見て、この前ちぃに石を投げた男の子が立ち上がってちぃを睨む。
「学校に犬なんか連れてきちゃ行けないんだぞ!今日は参観日なんだからママとパパが来る日なんだ!犬なんかパパでもママでもないじゃないか!」
周りの子たちが口々にそうだ!そうだ!とちぃを責める。
僕…来ない方が良かったのかな…。
おじいちゃんの胸に顔を埋めてちぃを見る。ちぃは何も言えずにうつむく。
そこで先生がパンパンと手を叩いた。
「参観日はご家族の方に日頃の勉強している姿を見てもらう日ですよ。パパやママじゃなくたってご家族は参観日に来る権利があります。ちはるちゃんの家族は礼於くんだけだから、今日は先生が特別に招待したんです。」
さぁ授業を始めますという先生の声に、しぶしぶ子どもたちは席につく。
ちぃは僕の方を見て、少し照れ笑いする。
授業が始まると、ちぃは一生懸命手を挙げて答える。僕はちぃがとても誇らしかった。
しばらくすると、周囲からひそひそと話す声が聞こえた。
「あの子が例の…?」
「母親に捨てられたんですって…」
「犬しか家族がいないなんてね…」そう言ってクスクス笑う。
僕は耳がすごく良いから、すぐにちぃのことを話しているとわかった。
だけど聞こえないふりをして、ちぃを一生懸命見つめる。
だって僕を抱いたおじいちゃんの腕が震えているのがわかったから…。
おじいちゃんも悔しいんだ。でも今日はちぃのための参観日だから…。僕はちぃに集中してこみあげる悔しさを抑える。
人間の世界は冷たい。こんな場所がちぃの毎日通う学校。これがちぃをいじめる子たち。これがいじめる子たちのパパやママ…。
それでも毎日笑顔で出掛けるちぃ。
今日だけは、心から学校に来て良かったって思って欲しい。
だって今日はちぃの家族がきた初めての参観日だから。
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