僕が捨てられたワケ

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生まれてすぐに、名前もつけられずに捨てられた。 詳しい理由はわからない。ただ、僕の両耳が茶色いせいだと後から知った。 僕のような毛色の犬はブラックタンと呼ばれているらしい。だけれど他の兄弟と違って僕の耳だけが茶色かった。スタンダードじゃないとか、コンテストには出られないとか、僕自身にはさっぱり分からない言葉を繰り返し、周囲の人間たちは僕を箱に詰め込んだ。 5匹いた兄弟のうち、すぐ上のお兄ちゃんだけが僕と一緒に詰め込まれた。 病気にでもかかっているのか、小さく丸まって動かない。どうやらそれが原因で僕と一緒にされたらしい。 ママはどこに行ったんだろう。 僕を示す名前は3桁の数字。 ママがくれた名前はない。 しばらくして、ガラスケースに入れられた。ここで僕らは値段をつけられ、売られるらしい。 他のこたちは必死で愛想を振り撒いている。お兄ちゃんは元気がない。顔を舐めても目を開けない。 ねぇ、ママ。僕の耳が茶色だから、僕は名前さえもらえなかったの? コンテストになんか出られなくたって、ママや兄弟と一緒にいられたら良かったのに…。 「誰か親切な人に名前をつけてもらってね」 そう言って目をそらしたけれど、僕はそんなまだ見ぬ誰かよりママに傍にいて欲しかったんだ…。 少しずつ小さくなってゆくお兄ちゃんの呼吸。 誰か僕たちをこのガラスケースから出して。 僕は目一杯の愛想を振り撒いた。この場所から出るために。
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