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僕が名前をもらった日
ちぃに抱かれて運ばれた場所は柔らかな毛布の上だった。
僕は、ちぃも毛布の柔らかさも信じられなくて、精一杯の威嚇をする。
ちぃは大きな瞳で僕をじっと見つめて呟いた。
「あなたに名前をあげる」
そう言って僕に礼於(れお)という名前をくれた。
「茶色い耳が可愛かったから好きになったの」と言ってくれた。
嬉しかった。
とても、とても…。
僕には言葉がなくて伝えられないのがもどかしかった。
だから精一杯ちぃに寄り添って甘えた。
「わたしもひとりぼっちなのよ。」
そう話していたちぃ。僕もひとりぼっちだ。お兄ちゃんはいなくなってしまったから。
僕が初めて名前をもらった日。
この日から僕とちぃの生活が始まった。
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