いじめられっこ

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いじめられっこ

ちぃと暮らし始めてから、僕はいつも不思議だった。 学校から帰ってくるたびに、ちぃの細い腕には傷が増えてゆく。 僕の体をシャンプーする時は、とても痛そうに顔をしかめる。 それでも僕を膝の上に乗せて、「綺麗になったね」って笑顔を見せてくれる。 ちぃには僕と一緒でパパもママもいない。 僕らはふたりぼっち。眠る時には寄り添って体を温める。 ちぃに頭をなでてほしくって、僕はいつもちぃの傍にいた。 寝物語にちぃは自分の話をしてくれる。 学校ではいじめられっこと呼ばれているらしい。 こんなに優しいこなのにどうしてなんだろう。 「礼於がいるから私は平気」 そう言って少し涙ぐんで眠りにつく。 ごめんねちぃ…。 僕は傍にいるだけで何も出来ない。 僕はとっても無力だ。
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