ほうたい

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とてもいい天気だ。 五分咲きの桜を揺らす心地よい風が耳元をくすぐった。 「うー…ん」 ここは、忍術学園の保健室。そこの主ともいえる6年生の善法寺伊作は障子戸を開け、背伸びをした。 とてもいい天気なのだが… 伊作には、それを素直には喜べないある理由があった。 「伊作!いるか?」 (…ほら、来た) 声の主は、同じ6年の学年一ギンギンに忍者していると言う潮江文次郎。 そう、伊作が喜べない理由とは晴天の日は怪我人が増えるということだった。 「文次郎、またぁ?」 伊作はなかばあきれた声で一瞥した。 「しかたないだろう!」 訓練をしていても多々傷をつけているようでは、まだまだだなと思う。 「伊作!」 伊作が文次郎の手当てをしていると、また別の声が保健室へ入ってきた。6年の立花仙蔵だった。 怒りを含んだその声は、ズカズカと伊作の側へ来るとどかっと座った。 (今日だったのか…) 学園一冷静で、その美しさからサラスト1位となった長く揺れる髪も今ではちぢれてしまっている。 「あ…仙蔵、おつかれー*」 こうゆうとき言葉を選ばなければ、あとがこわい。 「もうちょっとで、文次郎終わるから!」 「…あぁ」 「なんだまた厳禁か。まったく何度目だ?」(…バカ) 「き・さ・まぁ!」 なんで、この男は人を逆撫でするのが得意なのだろうかと伊作は思いながら、非難しておく。 自分は不運なのだ。 巻き込まれかねない。 「なんだぁ?たのしそうだな!!」 「…」 殺伐とした空気には似合わない間の抜けた声が響きわたった。6年の七松小平太と中在家長治だ。そこからは、お約束通り。 保健室はもはや、戦場と化した。 「はぁ…、まったくいい加減にしてくれよ!ここは保健室だよ!?」 叫んではみたものの、届くわけもなく、代わりに桶が飛んできた。 「うっ!!」 それは、伊作の顔面に直撃する。つくづく自分の不運を呪った。 だが、倒れる寸前で誰かに腕をつかまれる。 「どうなってんだぁ?保健室だろ?ここ」 「留三郎!」 良かった。やっとまともな人間がきてくれた。伊作は、ざっと説明すると同組、同室の食満留三郎に止めてくれるよう頼んだ。 「おい!おまえら、いい加減にしろ!!……うっ」
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