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ズシュッ!!
シュパッ!!
ザッ!!
街の鼓動が動きだそうとする少し前、民家の裏で朝霧を弾くように、冒険者の駆け出し御用達のロングソードを振り下ろす音が響く。
太刀筋を一刀ごと確かめながら、さながら舞踊にも見えるその太刀捌きを広げていた。
日々の鍛練がそうさせたと想像するに容易い、無駄のない身体つきだと一目でわかる。
彼にとって、その行為は冒険者を目指したときから続く日常的な行為であり、他に自慢してもいい成果だった。
いつものようにノルマをこなし、鞘へと剣を納めようとすると、見慣れた顔の女性と目があった。
「オハヨーさん。今朝も相変わらず、お疲れ様だね。」
そういうと女性は、なみなみと牛乳を注いだコップを渡してきた。
青年とは異なり、こちらは農業に長らく勤しんできた者とわかる。
今渡した牛乳も、彼女の家で育てている乳牛の一番搾りだ。
「一流の冒険者を目指す者としては、日々の鍛練は必須だろう。」
汗を拭い、ゴクゴクと朝の静まった空気を鳴らすように一気に飲み干した。
「冒険者ねぇ~」
「何が言いたい…」
「だってアンタ、ただのサラリーマンじゃん!」
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