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私は列車の窓辺に身をもたれさせ、始終崩れ落ちそうな頭を手で支えていた。
列車は広葉樹林の生えしきる林道を低速度で走り抜けトンネルにさしかかる。
真っ暗な洞内に列車の電灯が冴え、窓ガラスに私の顔が映る。
白い肌に、整った顔立ち。
私は、いわゆる世間でいう少しだけもてはやされる容姿をしていた。
でも私にはそれらに何の執着ももってはいなかった。
私はどうも元来内気性で、学生時代通っていた某所の進学校でも皆の言う青春というものはしていなかったと思う。
ときより寄ってくる胸元をひらつさせた男子には恐怖以外の感情はなかった。
トンネルを抜け、マダラに生えた木の間をチラチラと太陽光が覗かせる。
私は少し目を細め、横線が入ったようななだれた景色を眺めていた。
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