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「泣いてるんじゃないかなってずっと心配だった」
「泣いたわよ」
それはもう、この先一生泣けないのではないかと思うくらい、ふさぎこんだ。
自殺も考えた。
両親は大学を休学して戻って来いといった。
なんだったら辞めてもいいというくらいだったから、たぶん私の精神状態は本当にひどかったのだろう。
でも、負けず嫌いはここでも発揮されて、意地でも学校を辞めるかと思ったし休学もしなかった。
さすがに一ヶ月くらいは閉じこもっていたけど、もともと優秀だから(大学のレベルが低いとも言う)、しっかり単位はとれた。テスト時期じゃなかったのも幸いした。
「今でも泣いてる?」
「泣いてない」
そういった私の声は、完全に泣き声だった。
一年前、どうして私をつれていってくれなかったの。
責めたって、どうしようもないことだけど。
志朗にはそんなことできるはずがないのだけど、怒りをぶつけずにはいられない。
「今でも俺のことを想っていてくれて、嬉しいと思う」
志朗の両手に、頬を挟まれた。
まるで子供に言い聞かせるように、真正面から見据えられる。
「想ってない」
私は天の邪鬼だから、素直にはなれない。
でも志朗はいつだってそれを見破っていた。
見破っていてくれているつもりだった。
それはもしかすると、私の思い込みだろうか。
そうじゃなければ、あの日あんな大喧嘩にならなかった。
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