ep.1 操獣

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スライが右手を広げてレイに向ける。 レイの周りで小さな爆発が何度も起こり、砂ぼこりが舞った。 レイが見えなくなる。 しばらく砂ぼこりに目を凝らしていたスライの耳元で、 「バカ。どこ見てんの?」 レイの冷徹な声が響いた。 スライの両足首には、何本もの糸が巻き付いている。 その無数の糸は、すべてレイの10本の指に繋がっていた。 「しまっ……!」 スライが小さく叫んだ瞬間。 レイは両手を握りしめた。 糸が急速に引っ張られ、スライはうつ伏せにすっ転ぶ。 「痛ぇ!!」 悲鳴をあげた。 「痛いなら、私達に 喧嘩売らないことね。」 レイは体についた 砂ぼこりを払いながら しかめつらをしている。 糸がレイの肩に集まると、 その固まりがアダムに戻った。 「そーだそーだ! 火薬の能力だか なんだか知らないけど、 操獣を具現化することも できないくせにさぁ。」 アダムが意地悪げに言う。 「くそぉ……。体力は オレの方が上なのに!!」 スライは悔しそうに地面を叩いた。 「いくら体力があっても、 いかに、体力を使わずに 操獣と調和できるかでしょ。 つまりセンスがないのよ。 あきらめれば?」 レイは淡々と言って 細く長い銀の髪を翻す。 「あ!おい!待てよ! まだ終わってねぇぞ!」 スライが必死な声で呼び止めてきた。 「何言ってんだか。あんなに地面に引っ付いて…。」 アダムがレイにクスクス笑いかける。 「うるさい。帰るよ。 あんたまた必要以上に 糸出したでしょ? 少し疲れちゃったよ。」 レイは颯爽と歩き出した。
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