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そのままターンエンド……と行きたかったが、莉実がそこで二枚目に割られたシールドを突き出してきた。
「残念だけど、《ドンドン吸い込むナウ》だよぉ。デッキトップから五枚見て《フェアリー・ライフ》を加えて《エクスカリバー》はバウンスさせちゃうね?」
「……マジかよ」
手札に戻るわけじゃないサイキック・クリーチャーを完全除去し、手札も減らない。
ただでさえ、ハンドアドバンテージを失わずに除去が出来るという強力なトリガーなのに、対象が手札に残らないサイキックだったが為が更なる痛手となってしまった。
ドンドン吸い込むナウ
水文明/4マナ/呪文
S・トリガー
自分の山札の上から5枚を見る。そのうちの1枚を相手に見せて手札に加え、残りを好きな順序で山札の一番下に置く。このようにして見せたカードが火または自然のカードであれば、バトルゾーンにあるクリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻してもよい。
そしてそのままターンが移る。
「あははっ、わたしのターン! 《偽りの名ゾルゲ》をバトルゾーンにっ!」
莉実は勢いよくカードをドローすると、声を張り上げてクリーチャーの名前を宣言してきた。
な、何だ……!?
偽りの名 ゾルゲ
水/火/自然文明/8マナ/アンノウン/8000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーまたは自分の他のクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある他のクリーチャーを1体選んでもよい。そうした場合、その2体はバトルする。
W・ブレイカー
莉実のバトルゾーンに出て来たのは、禍々しいオーラを放つ巨人のクリーチャー。
血のように真っ赤に染まっている爪が、俺の背筋を凍らせてくる。
「……破壊」
「何っ!?」
《ゾルゲ》のカードを注視していたら突然、《シンカイヤヌス》が《ゾルゲ》の爪に突き刺され、爆散してしまった。
爆発による爆風と熱気に襲われる。
「ぐぅ……っ!」
「《ゾルゲ》はね、わたしが出したクリーチャーと別のクリーチャーを強制戦闘させられるんだよ」
《ゾルゲ》のカードをちらつかせながら説明する莉実。
なるほど……。
《ゾルゲ》自身にもトリガーし、《シンカイヤヌス》は《ゾルゲ》と強制バトルとなり、破壊されちまったのか。
「さ、お兄ちゃんのターンだよ?」
莉実は相も変わらずニコニコと、満面の笑顔でターンを渡してきた。
この状況下でのそれは逆に恐怖心さえ感じてしまうが。
俺は《ゾルゲ》の睨みつけながら、デッキに手を添えた。
「ドロー」
引いたカードを確認する。
それは枠から飛び出した雷撃が刻まれている呪文。
つまりは超次元呪文だ。
──『あのカード』を呼ぶ専用として入れた、な。
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