謎の転校生

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「ごめんねぇ、水木さん。うちら用事が出来ちゃったんだ」 「はあ?」 「と、ゆーわけだから、一人で大変だと思うけど、頑張ってね!」 言うや否や、彼女たちは掃除用具を放り捨ててどこかへ去っていった。 「・・・・・・もう慣れたけど、やっぱ嫌だな、こういうの」 私はため息をつき、彼女達の置き土産を拾い上げた。 夕焼けが差し込む廊下で、私はただ一人、文字通り「黄昏て」いた。 学校というのはなかなかシビアな場所だ。 社会人である父や母は「働くより、学校で勉強をしているほうが楽」というが、実際のところどうなのだろう?  学校という狭い社会も、一種の戦場だ。 その象徴的なものが、自分の所属する「クラス」である。 何をするにも、その窮屈な枠の中で行動をしなければならない。 修学旅行にしろ運動会にしろ、その枠を超えて行動をすることはあまりない。 自分の所属する「クラス」の中で友達をつくらなければ、一人ぼっちになってしまう。 他のクラスに友達がいても、あまり意味が無い。(勿論、全くいないよりはいた方が良いが) だから同じクラスの中に、最低一人は友達がいなくてはいけない。 ・・・・・・そんな強迫観念に常に付きまとわれる、ヘヴィな空間なのだ。 新しいクラスになり、親しかった友達と離れ離れになってしまった私は、そこで新しい“友達”を作らなければならなかったのだが―――。 あろうことか私は、その階段を踏み外してしまったのだ。 一度そうなってしまうと、そこから這い上がる事はなかなか難しい。 クラスの中でのさらに狭い枠組み―――すなわち「グループ」が結成され、私は「あっ」という間にその垣根の外へと放り出されてしまったのだ。 その原因を作ったのは、私が発した一言だった。 「・・・・・・やっぱりみんなには、“ヘビ”なんて見えないよね・・・・・・」
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