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夕日に照らされた廊下の中で、とある貼り紙が目に入った。
どうやら道徳のポスターらしいそれには、こう書かれていた。
「思いやりの心を持とう!」
…こんな貼り紙のあるこの廊下でちっとも「思いやり」のないメに遭った私って一体…?
…別に、彼女達を責めるつもりはない。
勿論「全く恨んでいない」と言えば嘘になるが、仕方がないのだ。
…人間は、本質的に「優しくない」…ヘビが見えるようになってから、はっきりとそう思うようになった。
勿論、人は他人に対して「心の底から優しく」なれる事だってある。
自分を犠牲にしてまで、他人に尽くす事だってできる。
…しかしそれはあくまで、友達や家族、恋人といった自分にとって「都合の良い存在に対して」だけだ。
自分にとって都合の悪い存在――そう例えば、人の身体の中にヘビが見えてしまうような気持ちの悪い同級生に「心の底から優しく」できる人は、一体どの位いるのだろう?
道徳のポスターを貼る事が悪い事だとは、決して思わない。
しかし皮肉な事に、この様なポスターを目にすればする程、人間がいかに「優しくない」生き物であるかがよく分かってしまうのだ。
人間は決して「優しく」ない――。
だから道徳を呼びかけるポスターは貼られるのだから。
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