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もし逆の立場だったとしたら――“ヘビ”が見えるのが私ではなく「別の誰か」だったとしたら――私だってその人を避けたり冷たくあたったりしたに違いないのだ。
…分からないというか納得いかないのは、何故“ヘビ”が見えてしまうのが他の誰でもなく「私なのか」という事。
そもそもあの“ヘビ”の正体は何なのかという事。
…さっきだって言おうと思えば言えたハズなのだ。
「そんな嘘などつかずにちゃんと掃除して」と。
…それが出来なかったのは、去って行く彼女達の腹の中にいるヘビ達が、あまりにも無邪気な暗い笑みを浮かべて私を見ているのが「見えて」しまったから。
―――見えた瞬間、私の中の“ヘビ”が、私の身体を締め付けて身動きとれなくさせたから。
あの“ヘビ”が、あの“ヘビ”さえいなければ、見えなければ、私は――――――!!
「手伝ってあげましょうか?」
全身が総毛だった。聞き間違えるはずがない。この甲高く幼い声は、あの“ヘビ女”の―――!
「“力ない者”が“力ある者”を見下すなんて、本当にいやらしいと思わない?」
あの女は後ろにいた。その声色は笑っていた。私は振り返れなかった。
「あなたにも『見える』んでしょう?」
違う、一緒にするな!
「隠さなくてもいいのよ。貴女は私と同類だから」
ふざけるな! 誰がお前と同類なんだ!
そう言いたかったが、声が出ない。
「貴女にも素質があるのよ!」
やばい、やばい、やばい!
だが、動けない。
「心配しなくていいのよ。私は貴女の“敵”ではないのだから」
逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ!
だが、その意思が強まれば強まるほどあの黒い霧――“ヘビ”は体積を増していく
「あ・・・・・・あ・・・・・・」
私の身体を締め上げていく。
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