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「ユカ、おはよう!」
クラスメイトに下の名前で呼ばれるのは実に久しぶりだった。
私も久しぶりに、クラスメイトを下の名で呼んだ。
「おはよう、響子!」
私達は家の方向が同じだったので、今日からさっそく一緒に登校することにしたのだ。
二人で一緒に、教室に入る。既に来ていたクラスメイトの何人かが、
「・・・・・・何? あの二人?」
「ま、いーじゃん。どーせうちらには関係ないよ」
さっそくひそひそ話しをはじめていた。無論、あの黒く細い霧のようなものを、腹の中でもぞもぞと動き回らせながら。
「・・・・・・」
私はその光景を、ただ黙って見ていた。
あの“ヘビ”の正体がなんなのか、昨日あの後、響子と話し合ったばかりである。
「・・・・・・人間って、こわいね」
私はポツリと言った。
「そうね」
恭子もあっさり頷いた。
「あんな人たちでも将来結婚して子供を作るのかと思うと・・・ぞっとするわ」
「人間は皆同じよ」
と響子が言う。
「皆、『ヘビ』を代々受け継がせて来たのよ。何千年も、何万年も、ね。
勿論、私達も」
「・・・・・・」
例外ではない、と言われて、なんだか気分が沈んだ。
そりゃ、自分の中にも『ヘビ』は見えるし、響子なんか、『ヘビ』そのものって感じがするのだけれど・・・。
やはり、自分だけは『特別』というか、『清い存在』で在りたいと願ってしまう。
でも多分、それは皆同じだ。
彼女達もまさか、腹の中で醜い物を蠢かせながら談笑(悪口とも言う)しているなんて、夢にも思わないだろう。
そしてそれを、他人(私)から見られているなんて、想像さえつかないだろう。
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