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「でもせっかくだし、あなたにもっと面白いものを見せてあげるわ。私は“ヘビ使い”だからそれを少し―――そう、ホンの少しだけれど操作することが出来るのよ。こんな風に、ね」
言って彼女はパチンと指を鳴らした。
「ってー! 何すんだよ!」
「っだよ、ちょっとぶつかったくらいで!」
「痛かったのはこっちだ! 謝れ!!」
喧嘩を始めた二人の男子生徒の口から、目から、鼻から、体中のあらゆる穴から黒煙が噴出した。
そう、それはまさに“闇”――
教室中を覆う巨大な“闇”だった。
それはたちまちヘビの姿となって、お互いに噛み付き合い、縛り合い、殴りあい始めたのだ。
息が詰まった。
胃の中がどろりとした。
「キャーッ!!」
女子生徒の悲鳴。
どうやら彼らの内のどちらか(あるいは両方)の身に何か起きたらしい。
だが、視界が真っ暗で何も見えない。
ヘビが見えない、一般の生徒にしか、この惨状は「見えない」ようである。
闇の中で、響子の顔だけが明るく笑って見えた。
「ほら、ね」
しかしその顔は、実につまらなそうでもあった――。
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