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「知吾?やっぱり、ここにいたか…」
ある日、ある昼休みの、ある学校のある屋上。
「……。」
僕は本を読んでいた。
「今日は風が緩やかで、暖かいね。
…んで何の本、読んでんの?」
彼女に本の表紙を見せる。
「ゲーテ…の詩集?
借りるの何回目?」
この本は学校の図書室にあった物だ。
「…借りたのは21回目。」
と僕は言った。
「よく覚えてるね。
あ、今日は月に一回の詩集デーだったか。」
詩集デー。
それは、僕が勝ってに作った
詩集を月に一回読む日である。
「今度、朗読してよ~♪
ゲーテ~♪」
「…嫌だ。
だって千夏、朗読してるうちに寝ちゃうから。
…この前の人間失格も。」
前回は週に一回の文学デーで、
人間失格を千夏に朗読したのだ。
…開始5分で彼女は熟睡したが。
「詩集なら寝ないよ!
…きっと。」
ガッツポーズをするが、
顔には冷や汗。
「……。」
僕は黙って、詩集に目を戻す。
「はぁ…相変わらずだなー…知吾は。」
喋るのが、面倒くさい。
と言うのもある。
…他の理由も。
なので僕は、あまり人と喋らない。
「とぉ~った♪」
突然千夏が、眼鏡を取った。
僕は遠視なので、近くが見えなくなった。
「…千夏。」
「知吾の堅物~♪」
「はぁ…ふざけるなよ。」
と言って僕はポケットから眼鏡ケースを取り出し、
中から赤褐色の眼鏡を出す。
「えっ!知吾、眼鏡2個も持ってたの!?」
「眼鏡はいつ壊れるかわからない。
から、5個は予備がある。」
「眼鏡取り上げた意味、ないじゃん…」
少し、しゅんとなる千夏。
「眼鏡を取る方が悪い。」
と僕は言った。
突然、千夏が
「知吾!」
と言って、屋上から飛び下りた。
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