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暗く、日の光の一筋さえない部屋には生まれたばかりの赤子と男女がいた。
オギャアオギャア……
赤ん坊の鳴き声がその部屋に響く。
すると、苦しそうに息をしている女が話始めた。
?「はあっ、はあっ……あなた、私はもうだめみたい。」
男は息を飲んだ。
女の顔は青白く、生気が感じられない。
?「そんなことをいうなっ。俺をおいて逝ったりしないだろう?」
質問に対する答えは帰ってこなかった。
?「っ…ねえ、今までっ…あなたと、居れて…よかったわ。」
女の目は力強い。
?「その子の事、頼んだわ。名前は…決めてあるのっ…はあっ…その子の名は、カレン…よ。私のっ…分まで、可愛がって…あげて…ちょうだい。」
女の体はもう持たないようだ。息も絶え絶えになり、見るからに辛そうである。
?「なぜそこまで…この子を産んだらどうなるか、最初からわかっていただろう?」
男の目から涙か流れる。
そう、この赤子は生まれる前から巨大な魔力を持ち、母胎が耐えられないのは目に見えていたのだ。
?「これは、私が選んだこと。どうか…その子を恨まないで。その子はっ、なにも…悪くないわ。……あなたと、その子、カレンに…幸せをっ祈っているわ。」
女はそういうと、満面の笑みを浮かべ、そのまま息を引き取った……
?「無理だ。俺にはお前を殺したこの子を大切にすることはできない…恨まずにいられない。」
男の顔は憎悪に歪んでいた。
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