第1章 「前途多難」な日常

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待ち合わせ場所は通りにある喫茶店。 平日の夕方という時間にもかかわらず、ほとんど・・というか全く人の姿はない。少し不思議な感覚がしたがこの通りに人が多かった覚えもないのでその違和感を無理矢理消し去った。 待ち合わせの時間は午後6時半、あと10分はある。 そう思いながら、注文したアイスコーヒーをちびちび飲みながら腕時計を眺めていると 「やあ、どうも」 と声をかけられた。 一瞬、彼かと思ったがその声からは十代とは思えない歳を重ねた重々しさがあった。 丈にぴったり合った黒いスーツを着た30代と思しき男に対し 「あ・・・はじめまして、ですよね?」 するとスーツの男は大袈裟に 「ああ!!これはこれは!!大変、失礼を致しました。わたくし、佐中健二(さなかけんじ)と申します」 慇懃無礼、そんな彼の顔をしっかり見つめるもやはり見覚えは・・・ない。 「佐中・・さん、ですか。」 「やはり、覚えてはいらっしゃらないようですね・・・。」 そ、そんなこと言われても初対面のおじさんに私はこれ以上どうしろと!? 「まあ、いまさらそんなことを嘆く必要はないのですがね」 「・・・?」 彼が何を言ったかあまり聞き取れず頭の上に?マークを浮かべていると ・・・瞬間、 バゴォォッ!!!! 頭に強烈な衝撃を浴びた。
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