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いつの間にか私の横に立っていた人物は私に満面の笑みを向けていた。
私に話しかけてきたその人はよく見ると
「不良さ・・・ん?」
この取材を始めて1番最初に出会った不良だった。
「まさか、待ち合わせの場所に嬢ちゃんがいないからかなり焦ったが・・。まあ、こうして出会えたんで良しとするか。」
私のすぐ横にいた不良さんは一歩私から離れると私の顔をしっかり見ながら
「改めて自己紹介しよう。俺の名前は北上大介(きたがみだいすけ)今日は嬢ちゃんに大事な話しがあって呼んだんだ。」
それまでここで何が行われていたのかお構いなしに自分の用件を伝える北上。
しかし未だパニック状態で意味がわからない私は
「と、とにかく何とかして逃げよう!!このおじさん、なんか変なの!!」
とりあえずこの場からの脱出を提案した。
すると北上は佐中に
「夕暮れ時に可愛い女の子を追いかけ回し、あげくには注射器を取り出す。とんだ変態だなおっさん。」
と、明らかに挑発していた。
「ちょっと!?私の言った事聞いた!!?あのおじさん明らかになんか危ない組織に所属してるわ・・逃げよう!」
しかし北上は、
「逃げるも何も、背中に壁があって目の前には敵がいる。決して広いとは言い難い横幅。逃げようと思って逃げられるのか?」
北上のその言葉に肯定したのは私でなく佐中が先だった。
「そこの少年の言う通りだね西村くん・・。何度も言うけどこれも仕事なんでね、逃がすわけにはいかないし・・・君が私から逃げ切れるはずもないよ」
佐中は西村に『もう諦めろ』と告げる。さらに、
「そこの少年、腕に多少覚えがあるみたいだが・・・あまり大人をナメないほうがいいぞ・・」
佐中の冷たい殺気に思わず悲鳴をあげそうになったが
「大丈夫だよ、君には俺がついてる」
北上は私の頭に手を置いて優しく話し掛けてくれる。おかげで少し落ち着いたが・・・
「で、でも・・・どうすればいいの?」
不安が多分に混ざった私の言葉。しかし北上はその不安を消し去るように明るい調子で
「まあ俺に任せといてよ、あんな奴・・一瞬で倒してやるからさ」
彼のその言葉からはとてつもない自信が感じられた。
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