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華奢な少女にお姫様抱っこされた青年は、夜空の月をバックに空を飛んだ。
そんな、おとぎ話のような光景に目を奪われるような住人はもういなかった。
むしろ、常日頃蒸気に包まれたこの街が靄も無く、星までクッキリと見えた事がこの街の人にとってのおとぎ話だったのかもしれない。
同時に弦楽器でも鳴らして雰囲気を華やかにしてやれば、それはそれは素敵な映像劇場のワンシーンの仲間入りだろう。
生憎、そのシーンを奏でる楽器といえば……
炸裂する火薬。
壁にぶち当たる鉛。
床を砕く少女の細足。
後方から響く怒号。
到底、弦楽器の澄んだ音色に及ぶ訳が無い。
更に言えば、そのワンシーンも少女は口から蒸気を漏らしながら一貫して無表情。
青年に至っては追いかける集団を指差して笑うぐらい愉快な顔をしていた。
このように、汚い部分から目を逸らし細工をくわえてやれば実に素晴らしいモノが出来上がる。
世間一般でいう捏造である。
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