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繋いだ糸が切れる瞬間。
この音は誰もが嫌う音であろう。
超えてはいけない一線。
一瞬という、文字通りの時間での瓦解。
それに対比するように永遠と続く消失。
その音を聞いた青年とも中年とも言えない男は、公園のベンチで腰をかけていた。
いずれは消えるモノ
永遠など無いというのは、中学生になった時には常識と化していたというのに。
実際にぶつかってみれば、そのわかったような思想がお笑い草だと身をもって理解する。
「ねぇ、おじさん何してるの?」
「全部無くしてね。嫌になっちゃんだ、お嬢ちゃん」
「なんで、無くすのは嫌なの?」
訪ねたのは、幼稚園か小学生の境目ぐらいの幼い子。
好奇心で埋まった思考に従い、訪ねる。
智慧も無ければ忍耐も無い、純白とも言える思考回路は必死で色を求めている最中だ。
「怖いからさ」
「なんで怖くなるの? なにが怖いの? オバケ?」
「それはおじさんにもわからないさ。ただね、怖いんだ」
「へー、ヘンなの」
疑問が解決して、その子は本能と欲求に従って再び公園に繰り出す。
その何も知らない様を見て、彼はふと思う。
彼女にもあの糸が切れる音を聞くことがあるのだろうかと。
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