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昔々の物語。
まだ人間が自然と共に生きていた頃、ここにはまだ神や妖怪や鬼と呼ばれる者も沢山存在していた。
神は全ての者に平等に命を与え土地を与えた。
全ての者と人間が共にあった頃、全ての者は互いの場所を侵さぬよう生きていた。
しかし人間が力をつけ他の者の場所を侵すようになった。
全ての土地を己の物にしようとしたのだ。
鬼や妖怪は怒り、人間の土地を荒らし、殺すようになる。
人間は鬼や妖怪を恐れ、嫌うようになる。
しかし極稀に鬼と恋に落ちる人間もいた。
鬼と人間の子供は『幼鬼ヨウキ』と呼ばれ必ず左胸に禍々しい痣を持って生まれてきた。
人間は『幼鬼』がいつか痣に蝕まれ本物の鬼となると考え、忌み嫌った。
『幼鬼』は殺さねばならない。
そう人間が考えるようになるまで時間はかからなかった。
人間は殺した。
泣き叫ぶ母親から子供を奪い子供を殺し、時に母親までもを。
逃げ出す母親もいた。
しかし人間は必死になって母親を追い詰める。
血走った目と、獲物を狙う獣のような顔。
…そう。
鬼の形相で。
その時の人間は、他のどんな者よりも鬼であった。
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