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「ハァハァハァハァ…。」
深い闇に覆われた山奥を必死に走る女がいた。
両手にしっかりと何かを抱きかかえながら裸足で。
女の後ろには小さく、しかし確かにいくつもの明かりが灯り、それは時間と共に確実に大きくなっている。
ザッザッザッザッザ
女は何度も後ろを振り返りながら山を駆け上がる。
息が上がり女の顔が歪むが女は足を止めたりしない。
女は腕の中の何かに向かって呟く。
「大丈夫…だ…よ…。
…お前は…おっかあが…守るから…。」
ザッザッザッザッザ
背後からの足音が大きくなる。
女は懸命に走った。
ザッザッザッザッザ
ザッザッザッザッザッザッ
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ
背後の明かりはもう既に大きくなり松明だと確認できる程に近付いていた。
女は必死で逃げるが距離は明らかに縮まってきている。
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