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女は喉を震わせながら言い返す。
言い返しながら女は逃げ道がないかと辺りに目をやった。
しかし希望は虚しく松明はもう女の周りを隙間なく囲んでいた。
「…鬼に体だけでなく心までやってしまったか。
そなたはもう人間ではないな…。」
そう言うと男は刀を抜き女に突き付けた。
それを見て周りの男達も一斉に刀を突き付ける。
「…お前ら…我ん等を殺したらおっとうはお前らを絶対に襲う。
それで構わぬと?」
女は男達に問い掛ける。
赤子の父親で女の最愛の夫は鬼だから。
その問い掛けに男は口角を持ち上げた。
「そなた気付いておらぬのか?」
「…何をだ?」
「近頃その馬鹿な鬼とやらは、帰って来たのか?」
女は目をさまよわせる。
確かに帰って来ていないのだ。
男は後ろにいた者に何かを持ち上げさせ女に見せた。
そして高らかに笑いながら言う。
「そりゃあ帰って来ぬであろうなぁ。」
男が持っていたのは最愛の夫の首だった。
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