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女は目を見開き固まる。
「鬼とは誠に可笑しな生き物よ。
子を作ってしばらくの間、力をなくしてしまうのだ。
あれだけ強き力がなくなってしまい大人しい兎のようになるのだ。
子や妻を守る力はあるが、己を守ったり他者を襲う力が一切なくなるのだよ。
…脆い生き物だと思わぬか?
お蔭で殺しやすくて助かったわ。」
きっと鬼は、何よりも純粋な存在だから。
女は聞こえていないような顔で夫の首を見ていた。
その表情は正に絶望であった。
「さぁ、赤子を渡せ。」
「…いや…だ…!!!!」
女は憎悪を込めた瞳で叫んだ。
「…無駄か。
ならば力ずくのみ。」
そう言うと男達は女に襲いかかった。
女は必死で暴れるが抵抗虚しく赤子を引き剥がされる。
「やめろ!!!!!!
離せ!!!!
その子を返せ!!!!」
地面に押さえつけられても女は必死で抗う。
その時、今まで静かに眠っていた赤子が目を覚ましぐずりはじめた。
しかし気に止める事もなく男は赤子をくるんでいる布を取り払った。
「…やはりあったか。
何とも禍々しい痣よのう。」
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