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赤子の露わになった胸の左側。
ちょうど心臓の位置にそれはあった。
毒々しいまでに紫色の痣。
幼鬼は必ず持って生まれて来るという呪われた痣。
赤子は寒いのか本格的に泣き出し身を縮こまらせている。
「その子の代わりに我が死ぬ!!!!
だからっ!!!!
その子だけは!!!!」
懇願する女に向かって男は笑いかけた。
「安心されよ。
…両方殺してやろう。」
その瞬間、女の首から血が吹き出した。
草が血に染まり血液独特の錆びた鉄の臭いが立ち込める。
男は女の亡骸を冷たく見下ろした後、地面に赤子を置いた。
赤子の異変を感じ泣き叫ぶ声が夜の山に響く。
男は刃先を痣に当てて呟いた。
「呪われし幼鬼よ…地獄で滅びたまへ。」
男が一気に刀に力を込めた。
その瞬間、森は静寂に包まれた。
その朝、山には息絶えた母子の姿が朝日に照らされていた。
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