始まりと、ピアノの音色。

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(今日もいい天気だなぁ…) ラケットを片手に空を見上げ、彼…─鳳長太郎は、そんな事を思いながら微笑を浮かべた。 瞬間、 ─ゴンッ 彼の頭に鈍い痛みが。 「俺らが引退したからって油断してんじゃねーぞ」 振り返ると、少し視線を下げた。 そこには尊敬してやまない先輩─宍戸亮が悪戯な笑みを浮かべて立っていた。 「酷いっすよ、宍戸先輩!」 鳳は未だに痛む頭を手で擦った。 …が、 ─パシンッ 次は手がヒリヒリする。 「次はお前ら2年が引っ張っていくんだからしっかり練習しろよな!」 「……はい!!」 「よし!んじゃ、俺は今から用事あるから」 鳳が元気よく返事を返すと、宍戸は‘じゃあな’と手を振って帰って行った。 ─なんだ…今日は打っていかないんだ。 少し、俯いた。 自分も、もう少ししたら三年になると言うのに実感が湧かない。 もしかしたら、三年になってもコートには先輩たちがいるかもしれない…と、そう思ってしまう。 「ハァ……練習やるか」 1つため息を溢し、鳳は練習に戻った。 .
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