19人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
――おお、神よ。あなたの存在は偽りであったのか。
彼の声が尽きたその時、雷鳴がやんだ。
一陣の風が吹くと雲は流され、光が辺りを照らした。
――私を蔑み、詰り、世界を憂うその言葉、その声、
しかとこの耳で聞き届けたぞ。
光に包まれ賢人はかく言う。
――神よ! やっと現われたな!
声だけなれど、もう一度問おう。
なぜ、苦しむ人々を救わぬのか。
――貴様ら人間が我らの懊悩を知らずに何を言うか。
我らが存在は支配の象徴と自由の鎖に過ぎぬのだ。
されど、下らぬ思い込みにより人間の為にあると思うている。
――我ら神は人間如きの為に存在するのではない。
あらゆるものへ平等に存在するのだ。
自分らを特別な存在などと思い上がるな。
少しばかり知恵を付け、賢き者へとなったつもりで何をほざくか。
最初のコメントを投稿しよう!