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「久しぶりの客に乾杯」
「ふふ、乾杯」
そう言うと二人はグラスを当てた。
こんな音が聞こえるのも2年ぶりである。チェリーは微かにはにかむ。
ブラックはそんな顔を見ながら、ラム酒で喉を潤した。
「本当に客が来ないんだな。メキシコ国境付近だってのに」
「この辺はみんな避けて通るのよ。いつ争いに巻き込まれるかわからないから」
「こんなに寂れてるのにな。もしかしたら一番安全かも」
「本当そうよね」
久々の客人にチェリーの心は踊っていた。
顔見知りとしか話さなかった色褪せた毎日が、この数分で一気に華やかになったのだ。
ここでブラックの顔つきが変わった。もう一つの別の男の顔だった。
「これを見てくれないか」
ブラックが取り出したのは地図。この村に来るものは殆ど持ち合わせているものだが、決定的に違ったことがあった。
それは血でつけられたバツ印。ピンポイントでつけられた、宝の目印だった。
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