妖艶な女主人

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「これは……」 「バツ印がつけられたこの場所……どの辺りかわかるか?」 チェリーは一呼吸置いてもう一度地図に目をやった。 「だだっ広い荒野の地図に、印なんて無意味よ」 「無いよりマシさ」 「ペネロペ村がここにあるんだから、メキシコに向かっていけばいいんじゃない?」 そういうとペンを取り出し、ペネロペ村と赤いバツ印、そしてMexicoという文字を繋いだ。 「ダメだ。確実性が足りない」 「命が惜しいの?」 「惜しいさ。大金が目の前にあんのに、死んでたまるかよ」 そんな彼らを見つめる二つの目玉。 窓に張り付いた死体のような保安官は、幽霊のように気配を消し、息を殺し、その一部始終を見ていた。 汗が頬を伝う。それはなにも暑いからではない。 心臓を鷲掴みにされたような、ひんやりとしたときに出る冷や汗だった。 彼の目はいつにもましてギラギラした。 そしてフッと消えてしまったのだ。 そんな保安官に、ブラックやチェリーは気付くはずもなかった。
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