序章 文覚

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「ノウマクサマンダバザラダンセンダ…タカマン。ノウマクサマンダバザラダンセンダ…タカマン。ノウマクサマンダバザラダンセンダ…タカマン。」 那智の滝壺で一心不乱に不動明王慈救呪を唱えている男がいた。 名は文覚(モンガク)と言う修験者だった。 文覚は21日間で30万回の不動明王慈救呪を唱える修行をしている。 この修行の間に何度か死に掛けている。 しかし、文覚は死を恐れていなかった。 文覚には死を恐れぬ理由があった。 それは大切に想っていた人を自らの手で殺してしまった過去があったからだ。 文覚は元、遠藤盛遠と言う名があった。 そして幼い頃から一緒に遊んだ従妹の少女が居た。 文覚は従妹の少女が好きだった。 そんな気持ちを秘めながら、文覚と少女は大人になる。 文覚が成人になると、父親と同じように警備の任がある滝口武士となった。 滝口武士の同僚には心が優しい渡辺渡(ワタナベワタル)という青年が居た。 歳も近いこともあり、直ぐに仲良くなった。 その渡辺渡に文覚の従妹の少女が嫁いだ。 そして文覚が17歳の時に、ある事件を興した。
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