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その後、光は宮田から様々な話を聞かされた。
自分は1ヶ月もの間、眠っていたこと。
脳の手術を行ったこと。
脳以外に損傷がなかったこと。
だが、もう1人の亡くなった人については、何も話されなかった。
また、手術の詳細も教えてくれなかった。
宮田曰く、話しても理解できない内容らしい。
そうこうしている内に1週間はあっという間に、過ぎていった。
退院当日、母親が迎えに来てくれた。
「ホントに、ホントによかった」
光の母は、目に涙を浮かべていた。
光は、この時初めて生きていてよかったと感じた。
退院の際に、宮田が見送ってくれた。
「退院おめでとう。何かあったら、うちの病院に来てくれたまえ」
この病院は、宮田医院というのか。
「はい。ありがとうございました」
光は、礼を言い病院を後にした。
帰りの車の中、久しぶりに母親と話した。
「最初に電話がかかってきた時には、ビックリしたわよ。光が、事故にあったって。意識がないって伝えられた時は、覚悟もしたけど…」
「ちょっと、勝手に殺さないでよ」
だが、確かに助かったのは奇跡的かもしれない。
「先生に感謝しなくちゃね」
光は、うん、と頷いた。
そして、あることに気がついた。
「それなら、どうして見舞に来なかったのさ?」
「先生から、まだ手術後だから会わない方がいいって、言われたのよ。」
「ふーん」
光は、シートを倒した。
「もう1人の人は、亡くなったんだってね?」
母親が聞いてきたが、光は、答えなかった。
母親は、一人でお気の毒に…と呟いていた。
そう、それだけが気になっていた。
もしかしたら、自分が殺したようなものかもしれないのに…。
考えながら、車に揺られ、光は、眠りについた。
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