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八名高校は、山奥にある私立高校だ。
光は、八名高校を受験し補欠で合格した。
合格した時は、素直に喜んだ。
楽しい高校生活が待っていると思っていた。
だが、現実は違った。
高校は、学力の競争率が激しく、ついていけない者も多かった。
できない者は、教師からも生徒からも、無視されていく。
そんな雰囲気が、学校を支配していた。
学校は、いつもと変わらなかった。
教師は、冷たく光が退院したことについては、何も触れられなかった。
難しい授業は、さらに難しく感じた。
1ヶ月以上も学校に行っていなければ、授業についていけないのは、明白だった。
休み時間になって、光は、トイレに行こうとした。
どっかの女子が、新しい携帯を買ったとかで騒いでいた。
光は、それを横目で見ながら教室を出た。
廊下を歩いていると、誰かに肩をたたかれた。
振り返ると、そこには現国の教師である
火口先生が立っていた。
「よっ、西野。退院おめでとう」
火口は、教師の中でも唯一、光に接してくれる人だった。
「ありがとうございます」
光は、軽く一礼した。
「元気で、よかった。一時は、どうなることかと思ったけどな」
心配してくれていた、それだけで十分だった。
「ご心配おかけしました」
「まぁ、元気に登校してくれてなりよりだ。そういやお前、授業は大丈夫なのか?」
「それが…」
光は、俯いた。
「だろうと思ったよ。よし、じゃあ今日補習をやってやるよ」
「ホントですか!?」
光には、願ってもないことだ。
「あぁ。 あいにく明日は入試だし、今日の授業は午前中までだしな」
そう言って、火口は親指を立てた。
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