WHITING

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時刻は22:32。 ハルカさんが俺たちにホストにならないかと持ち掛けて一週間弱経った土曜日。 大人の切ない事情により、無期限休店になったバイト先であるバーからは然程の距離はないが、雰囲気は正反対と言ってもいいようなこの繁華街に俺たち二人は来ていた。 「まさか、マスターがホストやってたなんて、なあ?」 ハルカさんに指定されたバーの席で、渉は口を開いた。 「…な」 本当に気付いてないようだった渉。同意の返事をしたが、俺は何となく気付いていた。風貌はもちろんだが、口のうまさ、さりげない気遣い、何より、客の雰囲気や業種から見ても、夜の世界に身を置いていたのだろうな、と言う感じだった。 俺らが勤めていた"BAR WHITED"は20:00-06:00。 その客の多くが、水商売の男女。同伴、アフターと呼ばれる店外営業にもよく使われている。 俺がハルカさんを覚えていた一番の理由。 そんな客の中で一番、彼がマスターと仲良さそうだったから。 あの日、いきなり持ち掛けられた話に、ぽかんとした俺らを知ってか知らずか、遥さんは経緯を話始めた。 かつてオーナーと遥さんがNo.1、No.2を争った仲であること。客だった女と付き合い、結婚と引退、バーの経営を決めたオーナーと、それを機に前々から考えていた独立の実現を決めた遥さん。 新しい事業の展開に成功したオーナーが、その事業が落ち着くまでバーを休店することを決めたこと。 そしてそれを聞いた遥さんが前々から目をつけていた俺たちに声をかけたこと。 ━━━━以上、今に至るってわけ。
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