1人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
そんな彼が、一人で来たある日曜日、時刻は20時過ぎ。
20時OPENのこの店、その日の一番客は彼だった。
チリン…━━━
来客を知らせるベルの音に、俺は拭いていたワイングラスから顔を上げた。
「いらっしゃいませ。今日はお一人ですか?」
人の顔を覚えるのが、というより記憶力自体が他人より優れている俺。そうじゃないとしても頻繁に来店する彼はよく覚えていた。
「ええ、今日は店が定休日なんでね。一人でゆっくり飲もうかと」
その日、ここで一緒にバイトしてる渉が寝坊して、俺はオープンから一時間ほど一人で営業することになっていた。
「そうなんですか。いつもお仕事、お疲れ様です。何を飲まれますか?」
手にしていたグラスを棚へと戻し、カウンターに座る彼へおしぼりとアッシュトレイを差し出す。
「そうだな、…バーボンでももらっとこうかな」
「かしこまりました」
頷きを返したらグラスへ指定されたアルコールを注いで彼の前へと出す。
「お待たせしました」
最初のコメントを投稿しよう!